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【法人向け】マネーフォワード クラウド会計とfreee会計の比較

2024年9月2日更新

会計ソフトを比較検討する際に『どっちがいいの?』とよく引き合いに出される「マネーフォワード」と「freee」。
共にクラウド型会計ソフトのため、一緒くたにされますが、かなり異なった設計思想を持っています。
これらの違いや機能の差について、さまざまなメーカーの業務ソフトばかりを20年以上扱ってきた業務ソフト専門店・ミモザ情報システムが、徹底解説します。

本記事はメインターゲットを「中小企業(法人)」と想定しておりますが、個人事業主向けプランにおいても比較の視点は同じですので、参考にしてください。

このページの目次

ざっくり言うと

マネーフォワード

従来の会計ソフトに近いシステムです。

クラウド型会計ソフト大手2社のうちの一角。データはネット上(マネーフォワードのサーバ上)にあるので、ネット環境さえあれば、PCやスマホなどの端末を問わず、いつでもどこでも使えます。
さらに、銀行やカードの利用明細データを取り込んで仕訳に変換することで手入力を極力少なくし、手作業ゆえのミスやそれを防ぐ照合作業を削減。経理業務の合理化を追求しています。
一方で、仕訳の概念自体はそのままなので、従来の会計ソフトに慣れ親しんだ経理担当者の方でも仕組みを理解しやすいのが特徴です。

【動画 3分】マネーフォワードクラウド会計の概要

freee

独特な仕組み、世界観を持つ会計ソフトです。

こちらもクラウド型会計ソフト大手2社のうちの一角です。
基本的な機能など、出来ることはマネーフォワードと近似していますが、「経理の効率化」という理想を実現するためのアプローチの仕方が違います。

詳細は後述しますが、freeeには、これまでの簿記の概念を打ち破って経理の仕事を捉え直し、「仕訳を切る」のではなく、一つ一つの「取引を登録する」ことで自然に会計t帳簿が出来上がるという設計思想が根底にあります。
簿記の知識がないまっさらな状態から会計を始める(始めざるを得ない)個人事業主などスモールビジネスオーナーの方に対して、革新的な製品を提供しようという思いが開発の根底にあります。

【動画 4分】freeeブランドストーリームービー

こちらは「freee」の紹介動画です

初心者はfreee、経験者はマネフォ、この見方には注意が必要です

ひとことで言えばそうなるのですが、かなり奥深いテーマですので、表面的な理解に留めてほしくありません

会計ソフトは一度導入し、データの蓄積を始めてしまうと、乗換が非常に面倒なシステムです(スイッチングコストが高い/解約率が低い)。
両ソフトはさまざまに比較されますが、一般論に流されて決めるのではなく「自社の要求に合致する」ことを第一に選ぶべきです。

それぞれの製品の開発コンセプト

これより、会計ソフト専門店の視点から掘り下げていきます。

マネーフォワードのコンセプト

お金と前向きに向き合い、可能性を広げることができるサービスを生み出すことを使命に掲げる株式会社マネーフォワード。
マネーフォワードクラウドは、2013年11月にリリースされたクラウド型会計ソフトで、40年近い歴史のある業界の中では後発のベンダーです。

マネーフォワード画面イメージ

主力の会計サービス「マネーフォワード クラウド会計」のコンセプトの核は『企業のあらゆる入出金に係るデータを集約するプラットフォーム(土台/受け皿)』です。

具体的に、マネーフォワードクラウド会計で仕訳データを作成するまでの大きな流れは下記のとおりです。

  1. 事前登録した銀行口座やクレジットカード会社、様々なネットサービスの入出金や利用情報をシステムが自動的に取得し
  2. 明細に含まれる取引相手等の情報を解析して「仕訳候補」として提示し
  3. 担当者は候補データを適宜確認・修正し、取引データとして確定させる

また、紙の請求書等はスマホカメラやスキャン画像として取り込むことで画像を解析し、金額や科目を推測してデータに起こします。
候補データを確認し、確定させる処理は連携データ起点の2.3.と同様です。

一方、従来の会計ソフトで仕訳データを作成する流れは下記の要領でした。

  1. 会社に届く紙の取引証憑を収集し
  2. 目視の上会計ソフトに手入力し
  3. 入力ミスがないか照合する

単純に、手入力を排除することによる作業工数の削減や、手入力起因のミスや、それを防ぐための照合作業に要していた手間暇を大きく削減できる点が、大きなメリットとなります。

ただし、こうした自動入力の機能が充実している分、操作感や手順に従来の会計ソフトと異なる部分も多く、非クラウド型の会計ソフトに慣れている人ほど、戸惑いを覚えることも多いでしょう。

freeeのコンセプト

Googleに在籍していた佐々木大輔氏が、非効率すぎる国産中小企業向け会計ソフトを何とかしたい!という思いをもって起業したのがfreee株式会社です。
リリースはマネーフォワードと同年で少し早い2013年3月。
今でこそ様々な業務システムを展開している同社ですが、一番最初にリリースされたのはやはり「会計」です。

「freee」のコンセプトの核は、マネーフォワードよりもさらに踏み込んだ『人が介在しない自動化』で、クレジットカードや銀行の取引明細、領収書や請求書などの証憑を取り込むことで、会計帳簿が勝手にできていくことを目指しています。

freee会計オンライン画面イメージ

ここまではマネーフォワードと近しいのですが、freeeはあくまで従来の会計ソフトの概念を超越することを主眼に置いています。
このため、従来の会計ソフト、簿記の世界では最も基本的な動作であった「仕訳」の登録は最小限とし、日常の入出金はより直感的に理解できる「取引」として登録していく画面構成にしています。

取引登録画面イメージ

具体的には

  1. 収入か支出化を選び
  2. 日付や取引先を入力し
  3. 金額を登録すると、仕訳形式に変換される

という操作の流れです。
画面下、最終的には仕訳の形が見えていますが、あくまで仕訳を直接打たない、打たせない、といった考え方が見て取れます。

もちろん、取引を直接手入力で登録するのではなく、銀行の入出金データなどから取り込むことが前提となっているのはマネーフォワードと同じです。
そうした仕訳の元となるデータを、マネーフォワードでは登録される「仕訳候補」として表示しますが、freeeはもう一歩踏み込んで、仕訳「候補」ではなく「確定した取引情報」として取り込めてしまいます(自動登録ルール)。
効率・手数の面では、freeeの方が優れているのは言わずもがなです。しかし、システムのこうした振る舞いは、会計ソフトや経理の仕事に慣れている人ほど、「怖さ」や「違和感」を抱くポイントでもあります。
もちろん、自動登録のルールの設定如何で、人間が関与する度合いを調節することは可能です。


両社は、リリース後10年以上にわたって熾烈な開発競争を繰り広げていますので、機能面でできること、出来ないことに大きな差はありません。
ただ、根源にある開発思想
・マネーフォワード「従来の経理業務を、システムの力で効率化する」
・freee「従来の経理業務プロセス自体を問い直す」
これらは画面や操作方法の端々に見えてきますので、比較の際のポイントとして押さえておきたいです。

なお、社名、製品名の「freee(フリー)」には、「自由」という意味と共に「無料」という意味も内包しています。
登場当初は「無料で決算申告ができる」ことを売り文句にしていた時期もありましたが、ごく小規模な事業主様はともかく、通常はデータを蓄積するために課金して運用する必要があります。

独立型とERP(統合)型

最近freeeが前面に押し出しているのは「ERP型」という売り文句です。
ERPとはEnterprise(企業) Resource(資源) Planning(計画)の略で、企業におけるヒトモノカネ等の経営資源を一元管理し、全体の最適化を図るるための経営手法のことです。
現在のIT業界における「ERP」とは、それを実現するために必要不可欠な一元的な情報管理の仕組み、いわゆる「統合型業務システム」の代名詞となりました。
freeeのデータ基盤は、会計を中心に販売管理や人事労務領域などが統合的に管理され、同じマスタ情報を共用しています。
このため、あちらのシステムを触った後に、こちらのシステムを立ち上げて同期処理を行わなければならない、ということが極力排除されています。

独立型とERP型

一方のマネーフォワードは「独立型」「アラカルト型」と言われるような、製品が細かく分かれている形態を採用しています。
当然、同一メーカーが開発した製品同士でデータの互換性は考慮され、ある程度の連携もなされてはいますが、マスタ情報はシステムごとに個別に持っているため、部分的にはあっちを直したらこっちも直さなければならない、という動きが生じます。
ただ、従来の会計ソフトやそのシリーズ等と異なり、CSVでのデータ書出し~読込といった操作は必要なく、ほとんどがボタン一つで半自動的にデータ連携されます。
また、この形態の最大のメリットは、必要な製品やライセンスのみ選択的・部分的に導入することがしやすい、ということです。
すなわち、使わないシステムに多額の利用料を払う羽目になる、という問題を回避できます。

コンセプトの差が出現している場面

2つのクラウド会計ソフトは、大きく開発思想が違うことが分かっていただけたと思います。
一方で、銀行やクレジットカードの入出金明細から自動的に起票することで、手作業を極力排除しつつ、正確な会計帳簿を作成していくという「基本的な機能」に違いはありません。
取引情報を記録し、複式簿記の会計帳簿を備え、決算書を作成するという「会計という仕事の目的」「会計ソフトの道具としての役割」は不変であるためです。
では、具体的にどのようなな場面・機能に、その違いが現れるのでしょうか。

振替伝票の入力

マネーフォワード

仕訳データを蓄積していくという従来の会計ソフトに近い考え方をもつため、振替伝票入力は普通に使う機能です。故にメニュー上でも比較的わかりやすい位置にあります。
複雑な複合仕訳も問題なく入力できます。
とは言え、仕訳の手入力は例外的な扱いです。従来のインストール型の会計ソフトのように入力欄が軽快に移り変わることはなく、逐一マウスで入力項目を選択しなければなりません。
クラウド型会計ソフトを導入するなら、なるべく取引明細データを取得して仕訳は自動入力し、手入力は補助的に使うことが望ましいです。

振替伝票の入力 マネーフォワード

freee

freeeは簿記の知識が無い方でも戸惑うことなく使えることをコンセプトとしているため、日常の取引入力シーンにおいては、基本的には利用しなくてよい(というか、利用しない方がよい)機能という扱いを受けています。
経過勘定科目などの決算整理仕訳を入力する際には利用できますが、振替伝票入力で登録したデータはレポート集計の対象とならないなどの制約もあり、常用しない前提となっています。
freeeの「徹底的に手入力を排除する」という設計思想が見て取れます。

振替伝票の入力 freee

補助科目とタグ

マネーフォワード

マネーフォワードは、従来の会計ソフト同様、補助科目を利用できます。
補助科目は、主に取引先や自社の支店や営業所、取引金融機関等を区分するために、会計ソフトでは古くから使われてきた機能です。
集計や分析の際の軸としても利用でき、後から追加や修正も可能です。
マネーフォワードにも仕訳毎に付加できる「タグ」の機能がありますが、用途は限られ検索時に使えるのみです。

freee

freeeには、補助科目という概念自体がありません。
代わりに利用するのが「タグ」です。
用途としては補助科目と同様に使えますが、分析やレポート時に複数要素を掛け合わせることができます。
具体的には、一つひとつの取引に自社の営業所や取引先、仕入先、製品カテゴリなど複数軸のタグを付加しておくことで、手軽にクロス集計が可能になるものです。
画期的である反面、事前のタグの設計と、漏らさずに登録していく運用が重要になりますし、他社製品からの乗り換え、あるいは他社製品への切り替えの際には厄介です。

freeeのタグ

請求書の発行や売掛管理について(異なる業務領域から生じる情報の捉え方)

マネーフォワード

従来の会計ソフトベンダーでは、請求書の発行や売掛管理に関しては「販売管理ソフト」という別製品で扱うケースがほとんどでした。
マネーフォワードもそういった製品ラインナップに近く、請求書の発行は別製品「マネーフォワード請求書」として提供されています。
もっとも、「ビジネスプラン」という基本プランへの加入で、「マネーフォワード会計」も「マネーフォワード請求書」も利用できますから、請求書の発行も、簡単な債権管理も追加費用なしで実施できます。
ただ、「マネーフォワード請求書」で作成したデータは、「マネーフォワード会計」で連携入力の操作をしないと、自動的に仕訳登録はされません。
ここはかなり両社の特徴が出ているところで、「勝手に登録されないのが良い」と捉えるか、「わざわざ登録しないといけないのが面倒」と捉えるかによって評価が分かれます。

マネーフォワード請求書

freee

見積書・請求書の発行や管理は「freee会計」の中で扱います。
このため、別ソフトへの画面遷移を行わなくても当該機能を利用できます。
また、請求書を発行すれば、自動的かつリアルタイムで売掛金の取引が登録されます。
複雑な売掛残の管理(債権管理)や入金消込については、「freee販売」を追加契約することでカバーできます。
「freee販売」での操作についても、「freee会計」とはリアルタイムに連携(同時に取引登録)します。
従来の会計ソフトの枠を超えていく、という考え方がここにも現れていますね。

freee請求書

金融機関やクレジットカードとの連携

データ連携のはなし

データ連携と一口に言っても、ユーザーである私たちは、その具体的な実現手法まではあまり意識しません。
現在、クラウド型会計ソフトにおける異なるシステム間連携(主に金融機関のデータ取得)において利用される手法は、おおまかに「CSV」「スクレイピング」「API」と大きく3つ挙げられます。

CSV

金融機関のWEBサイトなどから特定期間の利用明細をCSVと言われる汎用テキストデータとして取得し、それを会計ソフトに取り込むものです。
データをダウンロードするために各WEBサイトへログインしたり、CSVの形自体はそれぞれの事業者ごとにつ違うのが通常ですので、読み込む際は予め設定された特定のサービスや金融機関のテンプレートを選択したりします。
全銀協などでは、金融機関を跨いでこのデータ形式を統一し、「FBデータ」と呼んでいますね。従来のインストール型の会計ソフトでは、この形式のデータの受け入れや書き出しに対応できるものが多くありました。
CSVによる連携は都度データを扱う必要があるため面倒ですし、手作業ゆえ、データを取り違えたり、紛失したりするリスクがあります。

スクレイピング

CSVの欠点を補うべく、データの取得と取込までの一連の作業をプログラㇺで自動化したものです。
明細データをCSVとして取得せずとも、WEBサイトの利用明細画面を表示させ、そこに掲載される取引情報を自動的に取得・収集する、という方法も多用されます。
概ね2020年頃まで、多くのクラウド型会計ソフトはこの方式を採用していました。
ただ、考えてみればなかなか手荒な手法でもあり、連携先のWEBサイトに大きな負荷を掛けます。取得に時間がかかったり、アクセスを集中させたことでサーバをダウンさせてしまうこともあります。このため、スクレイピングを禁止しているサイトもあります。
そもそもIDやパスワードを使ってアクセスするため、それらを会計ソフトへ登録し預けることにもなるので、セキュリティ面でも気を遣います。

API

上記2つの欠点を補った接続形態です。
データをもつ金融機関と会計ソフト側であらかじめ約束事を定め、データの受け渡しをシステム同士で直接実施します。
情報が早く、エラーやWEBサイトの障害の影響も受けず、セキュリティ面でも安全性が高く今後はこの形態が主流になっていきます。
API連携先の金融機関に対しては、会計ソフトから直接振込指示もできるため、FBデータの作成やアップロードも不要になりました。
ただ、あらかじめ事業者間での契約が必要であったり、特に金融機関からデータを取得する際に費用が発生していることが多いため、サービスの原価に跳ね返ってしまう面もあります。

いずれにしても、金融機関との連携はAPI化が進み、2社間での差はほぼなくなっています(お客様が利用されている金融機関との連携状況は、連携手法も含め、事前に確認した方が良いでしょう)。
明確に差が出ているのは、クレジットカード会社との連携です。


マネーフォワード

クレジットカードとのデータ連携も、金融機関との連携同様APIが主流ですので情報の遅延がなく、本邦にある様々な会計ソフトと比較しても、その利便性は頭抜けています。
よく、クレジットカードの明細が連携されるのは「確定」になるまで待たなくてはならないと言われます。
このため、会計ソフト上には、カード会社のスマホアプリのように店舗での利用状況がリアルタイムで入ってこず、数日~半月ほどのタイムラグが生じます。
API連携ならばと、いわゆる未確定明細の状態でも情報が入って来るため、仕訳入力が遅れずに処理できるメリットがあり、マネーフォワードはここが強みです。
マネーフォワードのコンセプトは『企業のあらゆる入出金に係るデータを集約するプラットフォーム(土台/受け皿)』ですが、それを体現するために最も力を入れているのが、この「データ連携」であると言っても過言ではありません。

マネーフォワード連携

freee

マネーフォワードのとの比較で言うならば、API連携の比率が低く、クレジットカードの連携は前述の通り、確定情報にならないと入ってきません。
ただ、マネーフォワード以外の他の会計ソフトと比べて劣っているものではありません。
また、APIによる連携先は拡充が続いており、徐々に差は埋まっているとも言えます。

freee連携

(API)と表示のないものは、スクレイピングによる連携です

税務申告

マネーフォワード

マネーフォワードの中で税務申告はできません。
どうしても実施する必要がある場合は、会計データを出力し、NTTデータ株式会社の「達人シリーズ」に連携して対応します。
これは旧来から続いている弥生会計、会計王などと同じ態様です。
すなわち、複雑な日本の税法に関する知識のない一般の方が、自らの責任で(法人の)税務申告を完璧に対応するのは困難であり、税理士に委託するのが一般的という前提に立ち、法人税の計算・申告書の出力など「税務分野」の機能は、会計ソフトの範疇ではないために搭載しない、という考え方に依るものです。

freee

「freee申告」というソフトがあり、「freee会計」のデータを連携することで、法人税の税務申告まで対応できます。
ただ、freee申告で法人税申告書を作成するには一定の条件があり、「売上高1,000万円以下」「赤字決算」「設立からの年数が浅い(=会計処理がシンプル)」など、かなり限定的です。
ともあれ、法人向け会計ソフトの延長線上で税務申告までカバーすることは、ユーザーの税務知識がないままに誤った申告書の出力に繋がるリスクもあり、従来の会計ソフトベンダーは避けてきたことでもあります。
freeeが打ち出した「セルフ申告」への評価はまだ定まっていませんが、こうしたところにも、従来の会計ソフトの常識を打破していくfreeeの思想が垣間見えます。

freee申告

発展性/拡張性の比較

将来的な事業・組織の成長に際し、どう対応するか?という観点から比較します。

システム拡張の仕方

両社共にクラウド型のシステムのため、インストール型のシステムによくある、サーバなどハードウェアの入れ替えを伴う上位版へのグレードアップやバージョンアップを行う必要はありません。
原則ずっと同じシステムを使うため、パソコン買い換えに伴うデータの入れ替えも必要ありません。
一方で、個別のカスタマイズなどは行わず、業務プロセスはあくまでそれぞれのシステムに合わせながら、扱う情報量を増やし規模を拡大させていくことになります。
言い方を変えれば、両クラウド型会計ソフトは、元々の自動化や手作業の排除といった考え方により、組織の規模が大きくなって情報量が増えても耐え得る設計である、ということです。

マネーフォワード

ライセンス数(利用者数)を増やして対応していきます。
基本プランである「ビジネスプラン」のみの契約で、利用できるサービス(製品種別)は多岐にわたります。
ただ、製品によっては利用人数ごとの従量課金が必要になります。
基本的にライセンス数が少なくとも利用できる機能は絞られていませんので、事業所規模が大きくなるにつれて、利用しているサービスのライセンスを増大させていく、という考え方となります。
利用するサービス単位でライセンス数を増減できるため、利用していないサービスに対して課金する必要はなく、システム利用料にメリハリを利かせられます。
また、一定規模を超える場合には、内部統制に関する機能を付加した「会計Plus」や、「個別原価」や「固定資産」「連結会計」といった製品もあり、必要に応じて利用できます。

freee

上位プランへ契約替えしたり、ライセンスを増やして対応していきます。
会計だけで「ひとり法人」「スターター 」「スタンダード 」「アドバンス」「エンタープライズ」と、細かくグレード分けされていることが特徴です。
また、freee会計の中には「財務会計」「(帳票発行を含む)請求管理」「経費精算」「固定資産管理」などの機能が盛り込まれています。
利用しない機能に対しても料金が発生する、とも捉えられますが、度重なる料金プランの見直しを経て、利用できる機能はある程度契約プランと連動するようになりました。

よく議論に挙がるポイント

会社が成長軌道に乗り、経理人材を採用しようと思った際に、freeeは入力画面が独特なだけに、経験豊富な経理人材ほど慣れるのに手を焼く、と言った事態が起きます。
具体的には、振替伝票入力の項でも述べましたが、freeeは細かく仕訳を入力してコントロールするということを想定していません。
ただ、細かいことができないのは、細かいことをさせない、しなくて良いの裏返しです。そもそも、両社とも、手入力をさせないのがクラウド型会計の売りの部分でもあります。
従来の自社業務・経理業務を所与のものと考えるのではなく、いかにシステムに適合させるか、例えば、明細データが取得できる法人用クレジットカードでの決済を全社的に推進するなど、システム以外の業務をもシステムに寄せて再編していくことが、クラウド会計ソフト活用のポイントになります。

他サービス・システムとの連携

マネーフォワード

管理画面からの設定でAmazonやASKULなどとも連携でき、いわゆる金融系以外の取引明細も取得できます。
連携するために新たにアプリやプラグインを追加しなくてもよいので、やや安心感があります。
一方で、頻繁に連携先が増えることがなく、会計のAPIの公開範囲も限られるため、自社ないしパートナーに開発させて自社システムに繋ぎ込むという事もできません。
あくまでマネーフォワードが公式に連携すると謳っている製品・サービスとしか連携できない仕様です。

マネーフォワード他社連携

freee

公式のアプリストアがあり、Amazonやエアレジ、一部ECサイトとの連携はアプリの追加で対応できるようになります。
アプリはfreee社制作の公式のものもあれば、各接続先で独自に開発されたものもあります。
将来的なメンテナンスや突発的な不都合への対処は開発者ごとにまちまちでしょうから、ある程度は利用者の自己判断・自己裁量で利用することになりますが、APIの仕様を公開していることから、自社ないしパートナーに開発させて自社システムに繋ぎ込む余地があります。

freeeアプリストア

勤怠管理、人事管理、労務管理システムなどの連携先には、ほとんど差がありません

会計は先に述べた通りですが、クラウド型業務ソフトの活用範囲を会計領域から人事給与領域へと広げていく際は、それらのデータの連携状況も気になります。
結論から言えば、連携先の種類に両社間でさほど大きな差はありません。
連携手順は前述の通り、マネーフォワードは管理画面から選択、freeeはアプリストアから選択、のような違いが見られます。
「Toch on Time」などのクラウド勤怠管理システム、「Smart HR」などの労務管理クラウドとはAPIでスムーズに連携します。
一方で、直接競合するOBC(奉行シリーズ)や弥生など、昔からある業務ソフトベンダーの製品とは連携しません。
したがって、弥生給与とマネーフォワード会計は連携しませんし、共存させようと思うと必ず手入力が発生します。

途中でやめられる?データエクスポート(出力)について

会計ソフトは、一度導入すると基本的にはずっと使い続けるものです。
ソフトの入れ替えは、事業所規模が変わる、経理担当者が変わる、顧問税理士が変わるなどのタイミングで実施することがあります。
また、顧問税理士にデータを送る際に、先方が利用するソフトの指定や制約を受けることもあり、事前に確認が必要です。
両社とも、仕訳データのエクスポートは自在にできますが、科目体系や科目コードなどは移行前後のソフト間で事前に揃えておく、あるいは書き換えるなどの工夫が必要です。

マネーフォワード

勘定科目、取引先、登録した仕訳など、種々のデータ出力は可能です。
他社ソフトとのデータのやりとりについてもあらかじめメニューが用意されており、弥生会計、勘定奉行、PCA会計などはそれぞれの製品にそのまま取り込める形式での出力も可能です。
ただ、インポート(入力)対応先の多様さに比べると、エクスポート用仕訳データのテンプレートの種類は少なく、freeeよりも限定的です。

freee

以前は、一度登録したデータは完全には取り出すことができないと言われていましたが、近年データ出力機能は強化され、会計に関わるデータは仕訳、勘定科目、取引先などほぼ全て出力可能になっています。
他の会計ソフトと一線を画す「取引データ」についても、仕訳帳形式でのデータ出力ができるため、特段問題はありません。
最初からマネーフォワード、弥生会計、勘定奉行、PCA会計の仕訳形式で出力することもできます。
ただし、補助科目やタグなど、ソフト間で概念が違うものについては、どのように扱うか事前に検討が必要になります。

職業専門家(税理士/会計士)との付き合いを考える

中小企業の経理の現場では、決算・申告業務は(場合によっては月次決算や記帳そのものも)外部の税理士にアウトソース(委託)するのが一般的です。
その場合は、顧問契約を結んでいる専門家が自社の使用するシステムに対応しているか、事前に確認しておきたいところです。
場合によっては、過去に顧問税理士から指定があったために現在のソフトを使っている、という経緯があるかもしれません。

マネーフォワード

会計ソフトとしては後発のため、対応している専門家は相対的に少ないのが実情です。 このため、ずっとお世話になっている顧問先では対応できないと言われてしまうケースは考えられます。
しかし、マネーフォワードでは登録税理士のネットワークがあり、全国規模で見渡せば22,000名以上の税理士事務所で対応しています。
個人事務所から大手税理士法人まで幅広く登録されており、当社およびマネーフォワード株式会社からご紹介することもできます。

近くに対応する事務所が無くても、クラウドサービス全盛の時代ですから、リモートミーティングツールやリアルタイムでデータ共有ができるクラウド会計の強みを活かし、遠隔地からのサポートを行う事務所も多くあります。

freee

freeeにも、マネーフォワードのような税理士紹介サービスがあります。
ただし、ソフトとしての作りが独特なだけに、マネーフォワード以上に、freeeの考え方や機能をよく理解し、freeeの対応実績のある税理士を選んだ方が良いでしょう。
当然、対応可能な税理士も、マネーフォワードより少ないです。

保守・サポート体制の比較

ともに、会計ソフトの保守・サポートにかかる費用は、利用料金に含まれています。マネーフォワードには、電話サポートがありません。

そもそも、保守・サポートとは何か?

ソフトウェア業界において「保守」とは、事前に約束した条件(動作環境)の下、ソフトが正常に作動することを担保し、必要に応じてプログラムを修正・更新していくサービスのことを指します。 特に業務ソフトにおける保守は、消費税率の変更やインボイス制度の導入など、法令改正等によりルールが変わることに対して適応していくことも含まれます。

また、サポートとは、ソフトの操作に疑問が生じた際に、電話やメール、チャット等により、その疑問を解消するべく相談対応を行うサービスを指します。
これは、必ずしも有人対応とは限らず、製品に付属のマニュアルやQ&Aを参照したり、最近ではチャットボットによる案内も含まれてきます。

マネーフォワードもfreeeも、利用料の中にサポート費用を含みます。したがって、保守・サポートを受けるにあたり、別途費用は必要ありません。
また、サポートの水準(手厚さ)で料金に格差がつけられています。

マネーフォワード

マネーフォワードのサポート一番の特徴は、「電話によるサポートがない」ことです(個人事業主向け確定申告サービスを除く)。
元々電話窓口の設置がないため、この点はあきらめるほかありません。
代わりに、チャットサポートを受けることができます。
基本はチャットボット(無人対応)ですが、平日のオフィスアワーの間は、有人チャットを呼びだすことができます。

freee

契約プランにより、電話サポートの受付があります。
ただし、いつでもかけられるわけではなく、事前の予約制になっています。また、1回につき20分間の対応です。
さらに、事前にある程度フォームに質問事項を入力しておく必要もあります。
なかなかつながらない電話を待つ必要はないのですが、リアルタイムでの対応は難しくもあります。
この点は、弥生など従来の会計ソフトにおける電話サポートと大きく様相が異なりますので、留意が必要です。

また、freeeでもチャットサポートが受けられます。
基本はボット(無人対応)ですが、解決できなかった場合、平日のオフィスアワーの間は、有人チャットを呼びだすことができます。

それぞれの製品のコスト比較

非常に細かく条件が分かれていくため、一見しても高い安いの判断はしにくいのが実情です。
それぞれに割安になる条件というのはありますが、価格以上に、そもそもやりたいことができるのか、自社の実情にフィットするのか、という視点が優先されるべきだと考えます。
両社ともに、ソフトの所有権はベンダー側にあるため、利用料を払うのをやめると、サービスは停止されます。
一方、利用料の中にソフトの保守料(アップデート、法令改正)が含まれ、ベンダー側の責任で更新されていくため、いつも最新の状態で利用できます。
このため、バージョンアップやソフト買い替えの必要はなく、そのコストはかかりません。チャットサポートも追加費用なしで利用できます。
一定の利用人数/利用量に留まる限りは(ベンダー側の料金改定がない限り)、ずっと一定の金額で利用し続けることができます。

マネーフォワードの料金体系

  • スモールビジネスプラン:39,336円/年~

→会計だけでなく、経費精算、請求書の発行、3名までの勤怠管理、給与計算も利用できます。
→会計以外のソフトの利用は任意です。ただ、利用しなくても費用は変わりません。
→もちろん、会計以外のソフトのみの利用も可能です。
(例)
会計を3名で利用:39,336円/年
会計を5名で利用:73,656円/年

人事労務領域のシステムを活用しようと思うと、3名を超える場合は上位プランに加え従量課金部分が嵩み、契約金額が顕著に上がってきます。
ただ、会計領域だけなら3名のアクセスアカウントがあれば、かなり広範な中小企業で対応できます。

freeeの料金体系

  • スタータープラン:72,336円/年~

→会計の契約で、経費精算、請求書の発行も利用できます。
(例)
会計を3名で利用:72,336円/年
会計を5名で利用:80,256円/年

  • ひとり法人プラン:39,336円/年~

→会計の契約で、請求書の発行も利用できます。

いずれのプランでも、1人分のfreee人事労務アカウントが付きます。社長ご自身の役員報酬の計算と年末調整までは追加費用無しで実施可能です。
なお、freeeについては過去にかなりインパクトのあるな価格改定が行われていることにも留意したいです。
直近では2024年7月にプランの見直しがありましたが、実質値上げと評される価格改定を行っています。
上場後の2020年には「10倍改定」とも言われるような大幅な機能制限とプラン再編(という名の実質的な価格改定)もありました。

ただ、両社に共通して言えますが、クラウド型の会計ソフトは、在庫や流通に縛られないため柔軟な価格改定ができる体制であり、今後も値上がりしていくリスクがあります(しかも、電力やデータセンターなどインフラコストが一本調子で上がっている以上、値上げの蓋然性は非常に高いです)。
マネーフォワード・freee共に、中小企業向け会計ソフトの中でも、(プランにもよりますが)決して「安い」と言い切れる価格帯ではありませんので、「使いこなせそうか」「費用に見合った効果を発揮できそうか」は留意しておくべきです。

うちの会社に合うのはどちら?

それぞれの製品・サービスの特徴を勘案しつつ、企業像に当てはめてみます。

マネーフォワードをお勧めする企業像

  • 現在の業務プロセスは踏襲しつつ、できるところから段階的にデジタル化を進めたい
  • 弥生や会計王など、インストール型の会計ソフトからクラウド型の会計ソフトへの乗り換えを検討している
  • 現有スタッフが経理経験者で、かつインストール型会計ソフトの操作経験者である
  • 担当者にある程度簿記の知識がある
  • バックオフィスについては、複数の経理・事務スタッフで分業体制を敷いている、あるいは敷いていくことを想定している

一番の特徴は、昔ながらの会計ソフト(=簿記そのもの)と根本的な設計が近いので、会計ソフト経験者が使い出すうえでの違和感、抵抗感が少ないことです。
その上で、入出金明細取込からの自動起票や証憑の電子保管、いつでもどこでも見れる・使えるなど、クラウド会計ソフト特有のメリットを存分に生かすことができます。
また、マネーフォワードは会計以外にもカバーできる・システム化できる業務領域が広く、そのシステムもはっきり分かれているために業務ごとに段階的に導入ができる上、分担・分業もしやすいです。
会計以外の業務、労務管理や請求書発行などが総務や営業・販売など複数の部門に分かれている場合などは、フィットしやすいと思います。
一方、あくまで既存の会計ソフトに近い設計なので、現状の業務を根底から覆すような大きな変化、人員の大幅な削減を叶えられるかと問われると、freeeには及ばないように思われます。

freeeをお勧めする企業像

  • 会計、経理の専門人材がいない(簿記のことが分かる人材がいない)
  • メンバーの会計ソフトの使用経験が少ない、短い(先入観がない)
  • バックオフィスの専門人材がいない、外注比率が高い状態から少ない人員での内製化を標榜している
  • 最小限の人員・労働量でバックオフィス業務を回すために、既存の業務プロセスそのものを変革することを厭わない
  • 現状の業務課題を改善・打破するために、あえて大きな変化を取り入れたい

freeeは従来の会計ソフトの延長線上にあるのではなく、全く新しい業務遂行の在り方を標榜したシステムです。
その趣旨を理解し、自社に組み込んでいきたい、ある程度チャレンジングな変革に取り組みたいという機運があるなら、既存の会計ソフト経験者にも充分お勧めできます。
一方、現状業務からのドラスティックなまでの変化は望まない、現行の業務体制を維持しつつ、ゆっくりじっくりデジタル化に取り組みたいと考える会社には、やや負担が大きいでしょう。

どちらのソフトもお勧めできない企業像

クラウドベンダーは、(専任で担当がつくような大企業でない限り)基本的にはセルフサービスでの導入、運用が前提となっています。
コールセンターの規模が小さく繋がりにくかったり、そもそもなかったりするため、チャットやヘルプページなど文字情報ベースでの課題解決手段のウエイトが高いのも特徴です。
もちろん、有償の導入支援メニューはありますが、やはり実際の運用の中では、業務担当者が自身の力で学習し、自社なりのノウハウを溜め、自走していく必要があります。
そのため担当者には、データ連携の処理や初期設定などを、ヘルプページを頼りに試行錯誤の中で自己解決していける力が求められます。
一定のITリテラシー(単なるパソコンスキルとは異なります。データの流れを把握する力、システム内で起きることの因果を捉える力とでも言いましょうか)と、業務プロセスの修正や変更に関し裁量・決定権がある方の関与、あるいは頼れる税理士など専門家による伴走が必要不可欠です。
この辺りでやや尻込みしてしまう状況であれば、サポートが手厚くユーザー数も多い「弥生会計」や「勘定奉行」など、従来からある会計ソフトベンダーの製品の利用を検討した方が安心です。

一般論にあまり意味はない

マネーフォワードとfreee、どちらがお勧めかを論じてきましたが、自社の実情を踏まえて、その課題が解決できるサービスを選択することが、何よりも大切です。
そのため、会社によって答えが変わり、どちらがいいとは一概に言えるものではないのです。開発の根本的な思想や経緯背景が異なることを押さえたら、あとは実際に触って体験してみるのが一番です。
目が行きがちな金額だけの比較や、自社の要求事項が定まっていない段階での比較には、あまり意味がないことも分かっていただけると思います。

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