OBC奉行シリーズの令和6年(2024年)年末調整対応について
令和6年(2024年)の年末調整は、定額減税における年調減税事務への対応が必要です。
ここでは、OBCの給与奉行ユーザー様を念頭に、それら論点について整理し、企業ごとに異なる対応ポイントについて具体的な手立てをご案内します。
本ページは、2024年10月4日現在の情報をもとに、OBC認定販売店(OAP)である当社・ミモザ情報システムが公開しております。
このページの目次
紙の源泉徴収簿・源泉徴収票・給与支払報告書が必要な場合
当社では紙の令和6年用(令和7年1月提出用) 年末調整関連商品もお取り扱いしています。
OBC 源泉徴収票・源泉徴収簿」ページでは、年末調整関連商品の紹介だけでなく、年末調整の概要、専用サプライの変更点についても詳しく解説しています。
国税庁発行の『源泉所得税の改正のあらまし』から
国税庁発行の『源泉所得税の改正のあらまし』や『令和6年版 年末調整のしかた』より、令和6年年末調整業務に影響を与えるポイントをピックアップします。
年調減税事務について
影響範囲:定額減税の対象者
2024年に実施された「定額減税」では、対象者に対し原則として6月以降に実施された「月次減税事務」において税額控除を行いました。
※参考/OBC 奉行シリーズ 定額減税対応ガイド
ただ、その後「同一成形配偶者と扶養親族の数」に変更が生じたり、6月2日以降に入社された方がいたなど、月次減税事務で対応できなかった対象者に対しては、年末調整時点での定額減税額に基づき、年間の所得税額との精算を行わなければなりません。
これを「年調減税事務」と呼称しています。
具体的には下記の段取りで進めていきます。
- 対象者の確認
- 年調減税額の計算
- 年調減税額の控除
詳しくは「昨年と比べて変わった点(定額減税)」(国税庁)を参照してください。
給与奉行では、上記手続きを全てシステム上で実施できるように対応します。
11月には「令和6年 年末調整対応プログラム」として公開されますので、適用をお願いします。
帳票への影響
前年様式より変更はありません。
その他の変更点
定額減税の他にも、細かい点ですが、いくつかの変更があります。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」 記載事項の簡素化
影響範囲:ほぼ全員
令和7年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書より、前年に提出を受けた扶養控除等申告書に記載された事項から異動がない場合には、本人の氏名、住所及びマイナンバーを記載の上「異動がない」旨を余白に記載する等して提出すればよいこととされています。
こうした提出携帯によって提出されら申告書を「簡易な申告書」といいます。
年末調整手続きの簡略化は、その歩みの速さに対する評価はさることながら、着実に進んでいます。
「給与所得者の保険料控除申告書」の記載事項の削減
影響範囲:ほぼ全員
「生命保険料控除」欄の「保険金等の受取人」欄のうちの「あなたとの続柄」欄をはじめ、続柄を書く欄が軒並みが削除されています。
「住宅ローン控除適用に係る手続き」の変更
影響範囲:ごく一部の対象者のみ
令和4年度税制改正において、住宅ローン控除の適用に係る手続について、従来の年末残高証明書を用いる「証明書方式」から、年末残高調書を用いる「調書方式」とする改正が行われています。
ただし、金融機関側のシステムへの対応状況によっては、引き続き、「証明書方式」とすることができる経過措置が設けられており、現状では「証明書方式」が大勢を占めるものと想定されます。
※参考/住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について(国税庁)
調書方式に移行した金融機関における住宅ローン控除の確定申告・年末調整の手続については、「年末残高調書」の年末残高等の情報を納税者のマイナポータルより取得できるようになり、企業の担当者においてはこの「年末残高情報」の提供を受ける可能性があります。
社員の中に住宅ローン控除を受けている者がいる場合は、改正内容について確認をしておくことをお勧めします。
奉行ユーザー様の年末調整業務の電子化の進め方
定額減税をはじめ、年々複雑さを増していく税制や、拡充傾向のマイナポータル連携や各種証明書の電子化を前に、紙の申告書のみで対応を続けることは、大変な労力を要します。
加えて、昨今の採用難を鑑みるに、総務経理部門についてもマンパワーの減少に見舞われ、業務生産性の向上が急務です。
今後も、行政手続きや業務プロセスの電子化は進む一方ですので、なるべく早い時期に電子化に取り組み、慣れていくことをおすすめしたいと考えています。
今年は紙で乗り切るとしても、来年こそは、電子化を検討してみませんか。
電子化に取り組むにあたり押さえておきたいポイント
年末調整のような、複雑な作業工程が入り組んだ業務に対し、一つで年末調整の全工程を電子化するシステムは「存在しない」のが現状です。
このため、電子化にあたっては、全工程を一括して電子化しようと考えるのではなく、年末調整業務を分解し、電子化するポイントを定めることが肝要です。
自社の状況を鑑みて、年単位で段階的に進めることが、無理なく成功させる鍵です。
例年の業務手順・工程を分解する
- 1~3の、年調申告書の配布と回収を電子化するサービスは「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」です。
- 4~6の年末調整実務については「給与奉行」で既に電子化されています。
4の「給与ソフトへの情報の取り込み」について「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」を利用する場合、手入力が不要です。 - 7の源泉徴収票の配布については「奉行Edge 給与明細電子化クラウド」で電子化できます。
- 8~10の源泉徴収票・給与支払報告書の提出については「法定調書奉行」を導入することで電子申告を実現します。
各工程別の電子化の効果および費用感
電子化する業務領域 |
年調申告書の配布と回収 |
源泉徴収票の配布 |
源泉徴収票・給与支払報告書の提出 |
導入システム |
法定調書奉行 ※1 |
||
導入効果 |
大 |
中 |
中 |
コスト |
594円/人・年 |
792円/人・年 |
91,520円 |
導入までの準備期間 |
2~3週程度 |
1か月程度 |
2~3か月程度 |
影響を及ぼす範囲 |
全従業員 |
全従業員 |
顧問税理士、税務署、市区町村等 |
システム以外の事前準備事項 |
|
従業員の同意が必要(ただし、回答なき場合は同意があったものとみなす) |
電子申告の開始手続き、電子証明書の取得 |
備考 |
申告書類のペーパーレス化を実現。従業員とのやり取りが大幅に効率化される。 |
月々の給与明細書と併せて、源泉徴収票のペーパーレス化を実現します。 |
電子申告実施の義務化要件 ※2 を満たす場合は必須。給与支払報告書のペーパーレス化。 |
※1 法定調書奉行は、インストール型パッケージ版「法定調書奉行i11」を例示。「給与奉行クラウド」と組み合わせる場合は、「法定調書奉行クラウド」を導入します。
※2 電子申告実施の義務化要件は「OBC奉行シリーズにおけるe-Taxまたは光ディスク等による法定調書の提出義務化対応について」を参照ください。
この順番で電子化を進めるとスムーズです
まずは「年調申告書の配布と回収」の電子化をおすすめします。
導入コストも安く、費用対効果が高い上に、従業員様へ個別に同意書を取る必要もないため、始めやすいです。
特に、メールアドレスを収集したり、従業員の皆様にも、総務関係の手続きの電子化に慣れていただいたり、便利さを体感していただくことで、「給与明細(源泉徴収票)の配布」電子化の下地を作ることができます。
「源泉徴収票・給与支払報告書の提出」については、まずはe-Tax利用の義務化要件を満たすか否かで判断しましょう。
実際に電子申告を導入するためには、顧問税理士との連携や、役所への事前申請、電子証明書の準備などが必要なため、義務化要件を満たさないのであれば、あえて多忙な年末調整時期には行わないほうが得策です。
ただ、電子申告の環境が整うと、面倒な郵送や持参の労力を削減できるだけでなく、社会保険関係手続きの電子申請(e-Gov)導入に繋げていくこともできますので、取り組む価値は大きいです。
電子化に当たり、OBC以外のサービスを利用することの是非について
本ページでは、年末調整の各業務工程の電子化を実施するにあたって、連携させるサービスを「OBCの製品・サービス」に限定して紹介してきました。
本項では、より安価な他社製サービスを利用することの是非について検討します。
OBCの製品・サービスを利用するメリット・デメリット
(+)データの連携がスムーズ。社員情報や、各申告書への入力データを相互に無加工で取り込めるため、ミスが起きず確実。
(+)年末調整申告書サービスは、各申告書の提出状況の管理ができる。
(+)給与明細配信サービスは、明細配信の自動化ができる。
(+)いずれも、紙の運用と並行可能で、管理もしやすい。
(+)既存の給与計算ソフトと、サポート窓口や契約が一本化できる。
(-)価格が高め。
特に年末調整申告書サービスについては、リリース当初より値下げや最低利用人数が緩和されたため、同種のサービス間での差異はほとんどありませんし、むしろ安い部類です。
給与明細配信サービスに関しては、小規模のサービスも含めると乱立・飽和状態と言える状況です。実際に、安さをセールスポイントとし、奉行のデータを連携可能と謳うものも出ています(多くは正式に業務提携して連携しているのではなく、給与奉行のデータを独自に解析し揃えている)。
いずれも、OBC直営サービスの付加価値は、データ連携の確実さとスムーズさ、クラウドサービスとしての安全性や安定性、事業者としてのサービスの永続性です。
他社の製品・サービスを利用するメリット・デメリット
(+)価格が安い。
(-)データ連携はCSVのみで、加工が必要な場合も。
年末調整申告書サービスに関しては、シビアに見ても、給与奉行ユーザーがあえて他社製品を利用するメリットは乏しいです。
国税の年調ソフトとの違いについては、次項で説明します。
国税庁の「年末調整ソフト」(以下、年調ソフト)について
国税庁が無償配布する当該ソフトを用いることで、各種申告書を電子化し、自動転記や自動計算を実現します。また、マイナポータルと連携することで、保険料等の「控除額証明書」の交付を電子データとすることができる上、従来紙で提出していた証明書類の提出を省略できます。
しかしながら、奉行シリーズは「年調ソフト」に対応しません(詳細は後述します)。
このため、社員の方には「年調ソフト」を利用せず、従来通りの手順にて申告するよう案内してください。
<参考>年調ソフトを用いた申告作業の具体的な手順
- 従業員様が、各自保険会社より封書やハガキ等の紙で受け取っていた控除証明書について、電子データで取得し、これを年調ソフトへ取り込む
- 取り込んだ控除証明データをもとに、年調ソフト上で所得控除額を自動計算し、結果を電子データで出力できる。自動計算なので、計算ミスがなく、検算も不要
- 出力した控除データを提出することで、手書きによる各控除等申告書の作成・提出を省略できる
- 年末調整業務担当者は、控除データをを市販の給与計算ソフトに取り込むことで、各控除等申告書を見ながら手入力したり、チェックしたりする作業を省略できる。
※給与奉行は対応しません - 各控除等申告書や控除証明書原本の収集・保管が不要となり、業務のペーパーレス化が進展する
年調ソフトの課題と展望
年調ソフトを用いた業務フローの導入に意義は感じられるものの、現状では、以下の点から導入に向けてのハードルは、高いと言わざるを得ません。
従業員様自ら行わなければならない作業が多い
- 控除証明書の取得にあたり、マイナポータルを利用する場合は、マイナンバーカードの取得とカードリーダー等の対応機器が必要
- マイナポータルを利用しない場合は、自力での控除証明書データ収集作業が必要になる(保険会社ごとに手続きはまちまち)
- 収集した控除証明データを、年調ソフトに取り込むなどの操作を自ら行う
- 従業員様にとって、手書きの申告書作成の労力が削減できることはメリットだが、情報機器の扱いの巧拙や、マイナンバーへの理解度にも左右される
総務経理担当者様にとって、手間が減らない
- 仮に年調ソフトの申告書データを給与計算ソフトに取り込めたとしても、正常に取り込めているか、申告内容の照合等の手間は発生するため、業務削減効果は限定的
- 令和2年分の申告からの導入を想定すると、準備期間が短い
OBCは、給与奉行・法定調書奉行において、年調ソフトから出力されたデータの取り込みには「対応しない」と発表しました
上記懸念を踏まえ、奉行シリーズにおいて、年調ソフトから出力される申告書データへの連携対応を行いません。
ただし、年末調整の作業負荷が大きいこと、その負荷の本質は、膨大な情報の収集・集約と、複数の申告書様式やシステムへの多重入力・多重チェックにあることは、以前からの課題であることに変わりはありません。
今後、年調ソフトの課題が改善され、普及する可能性もあります。総務経理における「年末調整の電子化」は目が離せないテーマであり、引き続き注目していきましょう。
一部事業所におけるe-Taxまたは光ディスクによる提出の義務化
2024年10月現在、e-Tax(電子申告)または光ディスク(CD-ROM、DVD-ROM)による提出義務化の対象となるのは前々年に提出すべきであった当該法定調書の枚数が「100枚以上」の場合です。
さらに、今後基準が「100枚以上」から「30枚以上」へと、大幅に引き下げられることが決定しています。
具体的な基準や、OBCユーザーの対応については、下記ページにてご案内します。