印刷の技術
皆さんは普段どのような時に印刷をされますか?
その印刷は、何のためにされますか?
会議のための資料を何枚もコピーする、子供や家族の写真を年賀状にする……
人それぞれ、様々な印刷の場面があると思いますが、あまり「何のために」とは考えないかもしれません。
しかし、上記のような場面で、その目的をあえて言葉にするとしたら「調べたことを会議の参加者に伝える」「自分達の近況を伝える」でしょうか。
印刷の技術は、情報を人から人へ「伝える」ための手段として発展してきたと言えます。
印刷が発展する前は、書物やそこから得られる知識は限られた人のみが享受できるものでした。
しかし、印刷が普及し、本の大量生産が可能になったことで、知識がたくさんの人達に開かれたものに変わったのです。
その影響は大きく、宗教革命が起きた遠因は印刷の発展にあるとも言われています。
どんなに優れた思想も、叡智も、伝える手段を持たなければ人を動かすことはできない。「伝えたい」という人間の欲望が生み出した印刷という力は、人類史に大きな役割を果たしながら、今も私たち自身が利用し続けています。
「印刷は文化」、そう言わしめるだけの力が、印刷にはあるんですね。
印刷の歴史
印刷の歴史は古く、なんと紀元前4000年のバビロニアが発祥です。
バビロニアで作られていたのは瓦書(かわらしょ)というもので、板状の粘土に文字が刻みこまれたものです。
この時代から現代までを細かく見ていくと、それこそ一冊の本になってしまうため、簡単にお話します。
7世紀末頃には、版を作り複製するという方法が生まれました。
木版画をイメージしていただけたらわかりやすいかと思います。
14世紀に入ると、活版印刷とも言われる、活字を並べた印刷技術が普及し始めます。発明した「グーテンベルク」の名が知られています。
これら版のある印刷方式を「有版印刷」と言いますが、今からつい半世紀前くらい前までは、印刷と言えばこの方式しかありませんでした。
20世紀に入り、1959年にゼロックス社が最初のコピー機を発売しました。
版を作らずに印刷する方式「無版印刷」の始まりです。
例えば、家庭用として普及したインクジェットプリンターは、1980年代にはエプソン社が商品化に成功しています。
いま当たり前にある、コピー機や家庭用プリンターの登場は、印刷の長い歴史から見ると、とても最近の出来事なんですね。
現代に至っても未だ印刷技術の進歩はめざましく、ゼリーやケーキなどの半固体状のものをはじめ、もはや気体・液体以外のものなら何にでも印刷することが可能ということです。
試しに、周りを見渡してみてください。
手帳、ボールペンの軸、コーヒーの缶、お菓子のクッキー。
印刷されていない物を探す方が簡単なくらい、ほぼ全てのものに印刷が施されていませんか?
家庭・オフィス用プリンターの種類と簡単な原理
ゼリーにも印刷できる、と言われても、私達は「紙」に印刷することが多いですよね。
印刷に使う道具といえばプリンター。
インクジェットプリンターにレーザープリンターなど、一口に「プリンター」といっても、何種類もあります。
紙を切るのにハサミやカッターを使い分けるように、紙に印刷するときも、道具としてのプリンターの特徴を理解した上で、上手に使いこなせたら印刷のクオリティや作業効率が上がります。
以下、主なプリンターの種類や特徴について簡単に説明しますので、参考にしてみてください。
インクジェットプリンター
原理:インクを紙に吹き付けて印刷する
特徴:写真やイラストを高画質で表現できる、構造が単純で本体が小さく安価
オススメ:お客様の目に触れる掲示物など
近年では印刷のスピードも上がり、ビジネス用途でも波及が進んでいます。
レーザープリンター
原理:トナーと呼ばれる粉を熱と圧力で紙に定着させて印刷する
特徴:印刷のスピードが早くにじみもないため、文字を鮮明に表現できる
オススメ:素早く印刷したい場合や、テキストのみの資料など
なお、コピー機はレーザープリンターと同じ原理を利用して印刷しています。
ドットインパクトプリンター
原理:ピンと呼ばれるワイヤーをインクリボンに叩き つけて印字する
特徴:物理的に圧(インパクト)をかけて印字するため、カーボン紙を挟むと複写印刷できる
オススメ:伝票など、同じ内容の印刷物が複数枚必要な場合
注意:両端に紙送りの穴が開いている「連続用紙」を使います。
昇華型熱転写プリンター
原理:インクリボンに塗布された染料を、熱した印字ヘッドで専用紙へ転写する
特徴:色の濃淡といった階調表現に優れ、銀塩写真に迫る画質とも言われる
オススメ:写真の印刷
20年位前から製品化されていますが、近年は、スマホやデジカメからパソコンを介さず直接印刷できる小型モデルが、写真好きの女性から注目されています。
サーマルプリンター
原理:熱を帯びたヘッドを感熱紙に近づけ、現像する
特徴:インクを使わないので、プリンタ本体を小さくできる
店頭のレジスターや小型のハンディターミナルで使われます。
過去には当ショップでも感熱タイプのタックシールも多数ラインナップしていましたが、利用機会が減少したことから廃止となりました。
印刷の進歩は止まらない
プリンターはより早く、より鮮明にと進化し続け、今も歩みは止まっていません。
近年では、粉末の材料を使って部品や模型を作る「3Dプリンター」が登場し、応用系ではありますが、ついに「食べ物」を造形できる3Dプリンター「フード3Dプリンター」なるものも登場しています。
作るのに熟練が必要だった複雑な形のパイ生地や飴細工等を、職人に代わってあっという間に作ってしまうようです。
このような道具もいつか当たり前になり、私達の生活や文化をも変えていくのかも知れませんね。
私達の仕事や生活に欠かせなくなった「印刷」。
その印刷を身近にしたのは、普段気軽に利用しているプリンターのお陰でしょう。
しかし、プリンターは、印刷方式などの種類がいろいろある上に、精密な機械だけに設定が複雑で、使いにくかったり、うまく行かなかった経験から苦手意識がある方も多くいらっしゃるようです。
本コラムでは、日本のオフィスや家庭で普及しているインクジェットとレーザーの各プリンタについて、細かく解説していきます。
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